わたしの意地悪な弟
 確かに樹は興味がないと言っていたのだ。

 樹の言っていた言葉と利香の言っていた言葉は矛盾している気がする。

「じゃあ、利香はどうして」

「先輩は変わっているから」

 そう樹は言葉を濁す。

 変わっているといえば変わっているとは思う。

 樹を妙に意識しているというか、いつもわたしに樹の話をしてくるのは利香くらいだ。

 正確には樹単体というより、わたしと樹の関係なのかもしれない。

 樹のケーキの箱を持っていないほうの手が伸びてきて、わたしの頬をつかむ。

「何?」

 わたしは虚をつかれたまま樹を見る。

「ずっと気にしていたみたいだけど、俺相手にそんな細かいこと気にしないでいいよというか気にするなよ。家族なんだから。俺も気にしていない」

 その答えにわたしの顔がにやけそうになる。わたしは唇を噛んで、自分のにやけそうになる口元を必死に抑え込む。

 樹から家族と言ってもらったことが何よりも嬉しかったのだ。

「樹が映画の話をしたとき、元気がなかった気がしたの。だから、映画が原因だと思っていた」

 その言葉が引き金となったかのように、樹の頬が赤く染まる。
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