わたしの意地悪な弟
「気づいていたんだ」
「気づくよ。ずっと一緒に暮らしてきたんだから」
「たまたま気になることがあっただけだよ。でも、解決した。心配かけて悪かったな」
「わたしの早とちり?」
樹はしっかりと頷く。
一人で誤解して空回りしていた。そう考えると妙に恥ずかしくなってきた。利香も元気のない樹を見て勘違いしてしまったんだろう。
「ごめんね」
樹の手がわたしの頬から離れる。
「ありがとう。あとで食べるよ」
「うん。おいしかったら一緒に食べに行こう。あとね、樹は気にしなくていいと言ってくれたけど、結果的に映画すっぽかしたから、どこか行きたいところがあれば誘ってね。買い物でも、どこでも付き合うよ。荷物持ちでもいいし」
樹は目を見張るが、すぐに目を細めた。
「俺は誰かさんと違って一人でこなせるからな。俺のほうが力あるし」