わたしの意地悪な弟
 そう即答した樹を見て、肩を落とす。

 樹は確かにそうだ。ついていくとしても、お父さんが車を出せるし、ついて行くことが多い。

 わたしだったらせいぜい自転車しか出せない。

「分かった。仕方ないから付き合ってやるよ」

「本当に?」

 わたしが振り返ると、樹は呆れたような笑みを浮かべて頷く。

「たまには足手まといがいてもいいかもな」

「足手まといって酷い」

「半分冗談」

「半分は本気ってことじゃない」

 わたしは頬を膨らませた。

 樹は愉快そうに笑う。

 からわかれたのか本気なのか分からない。

 だが、他愛ないやり取りに心がすっと楽になる。

「どこに行くの?」

 買い物だろうか。それとも何かあるのだろうか。
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