わたしの意地悪な弟
 夕食後、わたしは樹の部屋をノックする。樹はすぐに顔を覗かせた。

「何か用?」

「あの約束だけど、動物園に行かない?」

「動物園?」

 彼は怪訝な顔でわたしを見る。

「とりあえず中に入れば?」

 彼に促されて部屋の中に入る。彼の机の上には数学の教科書が置いてある。

 勉強をしていたんだろう。

 彼は中間テストが終わっても、家にいる時はかなり勉強に時間を割いている。


 樹は目を細め、苦笑いを浮かべた。

「いいよ。次の日曜辺りで良い?」

「そんなにあっさり決めていいの?」

「別にいいよ。距離も近いし、リスクの高い場所でもない」

 樹の言葉に、行きたいという文意が含まれていなかったことが引っかかる。

「折角二人ででかけるのだから、二人で決めようよ。そっちのほうが楽しい」

「お前は行きたいんだよな?」

「久しぶりに行ってみたい気はする」

「お前の行きたいところでいいんだから、動物園で問題ないよ」
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