わたしの意地悪な弟
 家の外に出ると明るい陽射しが頬を叩く。

 樹はあくびをかみ殺しながら、天を仰ぐ。

「動物園に行くんだっけ?」

「その予定。行きたいところがあるなら、べつのところでもいいよ」

 樹は何も言わずに歩き出し、その後を追った。

 大通りに出たとき、同世代と思しき、女の子の二人組と遭遇する。

見知らぬ人だが、視界に収めたのは、二人が樹を見て、頬を赤らめながら頷きあっていたためだ。

樹はやっぱりどこにいても目立つのだろう。

 樹はそんな少女たちの視線には気付かず、樹を見ているわたしを不思議そうに見ていた。

 まだ高校に入ったばかりだからと言えなくもないが、彼もいずれ彼女を作るんだろうか。

 女の子に告白されたという話はまだ耳にしていないが、人気があるのは一目でわかる。

 中学の時は何度か告白はされていたようだ。

 だが、それ以上に相談と称し、樹に対する恋心を打ち明けられることはあった。

 おそらく、日和も同じような経験をしていただろう。
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