わたしの意地悪な弟
 わたしや日和と仲良くなり、樹に取り入ろうとした生徒もいる。

 だが、樹は誰に対しても無関心を貫いていた。

 動物園につくと、樹が「入場券を買ってくる」と言い残し、売り場に行く。そして、樹がチケットを手に戻ってきた。

「いくらだった?」

「俺が払う」

「払うよ」

「煩い。そもそもそんなに高いものじゃないから、気にする必要もないよ」

 強引な一言で会話を締めると、わたしの腕を引っ張り入口まで連れていく。

 わたしが彼の名前を呼んで諌めようとしても、全く反応してくれない。

 彼の手が離れたのは、入口を通過した後だ。

「適当に見に行くか」

 そう言い残し、勝手に歩き出した。

「お金だけど」

「だいたい、俺がお前の言うことを聞くと思う?」

「聞かないよね」

 すっと答えが出てくるし、それを当たり前のように樹も受け入れている。

 結局わたしがお金を払うのは拒否されてしまった。

 優しさなのか、他の理由があるのか全く分からない。

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