わたしの意地悪な弟
 動物園を一通り見ると、併設されている植物園に入る。

動物園と違い人は少ないためか、辺りに広がる植物の影響なのかゆったりとした時間の流れを感じていた。

「どこに行こうか」

 その樹の問いかけに返事をする前に、わたしのお腹が鳴る。

 お腹が鳴るのを聞かれるくらいよくあるので恥ずかしくはないが、わたしは動物園自体が家から歩ける距離ということもあり、昼食のことを失念していたのだ。

 時刻は一時を回ったところで、そろそろお腹が空いてもおかしくない時間だ。

 動植物園は遠足でも使われるように、お弁当の持ち込みは許可されているが、レストランのような、昼食のようなお店がある。店内で食べてもいいし、外で食べられるような、軽食も売っていたはずだ。

「適当に食べる?」

「そうだね。家に帰ってちゃんと食べればいいし、軽食だけでも食べようかな」

 わたしと樹はレストランに行くと、ホットドッグとコーヒーという同じものを注文する。

 わたしがお金を出す前に、樹が支払いを済ませてしまった。
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