わたしの意地悪な弟
 視線を感じ、顔をあげると樹がわたしを見ていた。

「どうかした?」

「何でもない」

 そう言葉をきった樹がおもむろにため息を吐く。

「お前さ、期末テスト大丈夫なわけ? これだと俺が来年受験してもいい大学に入れるかもね」

「そんなことないはず」

 ないと断言したかったが、心なしか声が小さくなっていく。

 そこまで言われると悲しくはなってくる。

「二年生の勉強を先取りして、バカな姉さんに勉強を教えるのも悪くないな」

 わたしは頬を膨らませて樹の言葉に抵抗した。

「悔しいなら俺よりいい成績を取ったらいいよ」

「いい成績ってわたしと樹じゃ学年違うもの」

「同じ模試を受けても姉さんには負けない気がするよ」

 そんなことないといえないのがきついところだ。彼は受けるなら相当猛勉強するだろう。

 今だってかなりの勉強量をこなしているのだ。

 黙っているわたしに樹が追い打ちをかける。
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