わたしの意地悪な弟
「最近、姉さんをからかうのが楽しいんだよね」

「意地悪」

 そう爽やかな笑顔を浮かべて口にした樹に対して、頬を膨らませ、必死に抵抗する。

 樹と目が合い、わたしと彼はどちらかともなく笑い出してしまっていた。

 わたしはふと視線を感じ、辺りを見渡す。

「どうかした?」

「なんでもない」

 誰かに睨まれているような鋭い視線を感じたが、辺りを見渡してもわたしたちを睨んでいる人はいなかったように思う。変な目で見ている人はいたけれど。

 首を傾げながらも、家に帰ることにした。


 皆が好きな話題で盛り上がる昼休み、鋭い言葉がわたしの耳を抉る。

「あの人が樹君のお姉さんなの? 想像していたより普通だね」

「見られているね」

 亜子は後方を見て、苦笑いを浮かべる。

「本当、困るよね」

 わたしは自分の前髪に触れると、顔を机に伏せた。

 昨日の視線と関係があるかは分からないが、今朝、利香から気になる噂を聞いたのだ。
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