わたしの意地悪な弟
 呆れ顔の利香が、わたしの背中をさすってくれた。

 わたしは何とかおにぎりを飲み込んだ。

 外にいる生徒たちにでも聞かれようものなら、一悶着ありそうだ。

 今まで樹との関係をからかわれることがあっても、たいていわたしと樹が釣り合わないと言われるばかりで、そこまでストレートに言われたことはなかった。

 そもそもそんなこと考えたこともなかった。

「わたしと樹は兄弟なんだよ。付き合うわけないって」

「でも、血も繋がってないし、あれだけカッコいいんだもん。惚れても許されるって」

「誰に許されるのよ」

 わたしは苦笑いを浮かべる。

「両親じゃないの?」

 と利香がまじめな顔をして言う。

 もっともな返しだが、そもそもわたしも樹もお互いを好きでもないため、前提条件が間違っている。

「わたしはお姉さんになりたかっただけで、樹に恋愛感情は持ってないよ」

「そんなことを言っていたら、誰かに取られちゃうよ。そのときには後悔しても遅いよ」
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