キミはまぼろしの婚約者
綺麗な海と砂浜が揺れる。

きらきら、ゆらゆらと、目元を何度拭っても揺れている。

遊んでいる子供達が、私を指差して物珍しそうに何か言っていたけど、そんなことも気にせず、ひとりバス停へと戻った。


バスに乗り込む頃には、やっと涙が落ち着いたけど、当然気力はまったくない。

砂でざらつく足もどうでも良くて、ただぼんやりと窓の外を眺めて着くのを待った。


そんな調子で自分の街に戻ってきた時には、空は薄紫色に染まってきていた。

すでに一番星が輝いている。

今日は天気が良いから、夜は天の川が広がるかもしれないな。


律も私の後のバスに乗ったかなぁ……なんて、妙に現実的なことを考えながら、とぼとぼと家に向かって歩く。

その最中、意外な人と出くわしてしまった。


「あれ」

「……キョウ……!」


私を見て目を丸くするのは、自転車に乗ったキョウ。

Tシャツにジーンズというラフな私服姿だけど、なぜかサマになっている彼は、私のすぐそばに来て止まった。

少しだけ気分が軽くなった私は、いつものように話し掛ける。

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