キミはまぼろしの婚約者
一歩を踏み出して、前へ
初めて身体に異常を感じたのは、中学二年の秋頃。
右足が痛くて、思うように動かなくなり、サッカーボールをうまく蹴ることができなくなった。
始めは筋肉痛か何かだと軽く考えていたものの、いつになっても治ることはなく、むしろ状態は悪くなる一方だった。
歩きだそうとしても一歩が出ない。
バランスが取れなくて、壁にぶつかる。
軽く走ったり、階段の上り下りはあまり支障ないのに、歩くのが難しいと強く感じた。
さらには足だけでなく、右手までもが震えるようになってきていたのだ。
これはさすがにおかしいと思い、最初に越に相談した。
すると、話が行き渡った両親は、深刻そうな顔をしてすぐに俺を病院に連れていった。
引っ越した先の病院ではなく、なぜか小夜達がいる、地元の神経内科に。
そこで様々な検査をして、薬を飲み、その結果を見て下された診断は──
突然、明るい未来が見えなくなるような、辛い内容だった。
これからどう生きていくのか。
その考えを、今までと180度変えることになった、人生の転機。
病名を告げられた時が、まさにその瞬間だった。