キミはまぼろしの婚約者
そばにいれば、それでいい
「ハッピーバースデー!」
「誕生日おめでとう、小夜!」
ありさの両親が経営する、ログハウス風の小さな喫茶店にて。
サプライズで皆が用意してくれていたホールのケーキが登場して、私は興奮気味に「ありがとう~!」と言った。
たくさんのフルーツが乗った色鮮やかなケーキは、今日集まってくれたありさとミキマキコンビが、さっきデコレーションしてくれたらしい。
チョコのプレートに書かれた英語が“Happy birhday”になっていて、“t”が抜けているのもご愛嬌だ。
「ありさってケーキとかデコるのセンスあるよね」
「さすが喫茶店の娘です」
「もっとお褒め」
海姫ちゃんと真木ちゃんが感心したように言い、ありさは茶化しながらも得意げに笑った。
ボーイッシュなありさだけど、ケーキに限らず料理が上手なのだ。
調理師である彼女のお父さんに、昔から教えてもらっていたというから、納得だし羨ましくもある。
嬉しいお祝いに感激しながら、皆でケーキの写メを撮っていると。
私の左横で、ひとりマイペースに料理を食べている男子が呟く。