キミはまぼろしの婚約者
「気が変わったんじゃねーの」


わずかに笑みを浮かべながら、軽い調子で言うキョウだけど、私はいまいちふに落ちない。


「そんな簡単なものかなぁ」

「男なんて単純だからな。今までアイツは、本当の気持ちを隠して我慢してただけなんだよ、たぶん」


なんだか、すごく律のことを理解しているような言い方をするね……。

ふと疑問に思い、私は彼を探るような上目遣いで見つめる。


「キョウ、律と何か話したの?」

「へ? ……んなわけねーだろ」


一瞬目を開いたキョウだけど、否定してふいっと顔を背けた。

本当かなぁと思っていると、ミキマキコンビがにんまりと笑いながら、テーブルに身を乗り出してくる。


「逢坂くん来たら、あたし達すぐ退散するから!」

「どうぞお構いなく、ふたりの世界に浸ってください」

「や、そんなことにはならないよきっと……!」


私はナイナイと両手を振るものの、皆はもう盛り上がっちゃって聞く耳持たず。

かく言う私も、どんな理由であれ律が来ると思うと、否応なしに胸が高鳴ってしまうのだった。


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