キミはまぼろしの婚約者
「いいの、私は大丈夫だから。それより救急車──!」
とにかく電話しようと、バッグからスマホを取り出そうとすると、律がゆっくり手で制した。
その手が震えていて、言葉が喉に詰まってしまう。
なんとか上体を起こした彼は、はいつくばるようにして道の脇へ移動しようとする。
よく見ると足も震えているみたいだ。
いつもの律から想像できない姿に困惑しながらも、とにかく今は彼を助けようと、身体に腕を回して支えた。
あまり人目につかない木陰に一緒に座ると、律はポケットから取り出したスマホを、震える手で私に差し出す。
「越に、電話……」
「えっちゃんに?」
「ボタン……うまく、押せなくて」
それを聞いて、さらにぐっと胸が苦しくなった。
この状態を見ていれば、もう一目瞭然だ。
律は、きっと何かの病気を患っているんだって──。
髪で表情が隠された、頭を垂れる彼を見つめて、私は唇を噛みしめる。
泣きそうになるのを堪えて“逢坂 越”の名前を探し、電話をかけた。
とにかく電話しようと、バッグからスマホを取り出そうとすると、律がゆっくり手で制した。
その手が震えていて、言葉が喉に詰まってしまう。
なんとか上体を起こした彼は、はいつくばるようにして道の脇へ移動しようとする。
よく見ると足も震えているみたいだ。
いつもの律から想像できない姿に困惑しながらも、とにかく今は彼を助けようと、身体に腕を回して支えた。
あまり人目につかない木陰に一緒に座ると、律はポケットから取り出したスマホを、震える手で私に差し出す。
「越に、電話……」
「えっちゃんに?」
「ボタン……うまく、押せなくて」
それを聞いて、さらにぐっと胸が苦しくなった。
この状態を見ていれば、もう一目瞭然だ。
律は、きっと何かの病気を患っているんだって──。
髪で表情が隠された、頭を垂れる彼を見つめて、私は唇を噛みしめる。
泣きそうになるのを堪えて“逢坂 越”の名前を探し、電話をかけた。