キミはまぼろしの婚約者
「最初に症状が出たのは、中2の時だった。足が痛くて、手が震える時があるって相談されて」


中2というと、律と連絡が取れなくなった頃と重なる。

まさか、そんなに前から病気を患っていたなんて……。


「両親はそれを聞いて、すぐに今通ってる病院に連れてったよ。親父の母親……つまり俺達のおばあちゃんが、同じパーキンソン病だったらしくて。遺伝する可能性があるってことを、親はずっと気にしていたらしい」


そうやって、早くに治療を始められたことはよかったと、えっちゃんは言う。

若年性のパーキンソン病は診断が難しいから、何年も病名がわからない人も中にはいるそうだ。


「それで……サッカーもできなくなっちゃったの?」


眉を下げながら聞くと、彼は目を伏せて頷いた。


「激しい運動はやっぱりやめた方が良くてね。でも律の場合、まだ症状は軽いし、薬を飲んでいれば日常生活には支障ないよ」


えっちゃんは、私を安心させてくれるように微笑む。

だけど、大好きなサッカーができなくなって、律はどれだけ悔しかっただろうと思うと、やり切れなさでいっぱいだ。

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