キミはまぼろしの婚約者
「それに、長年薬を飲み続けると、いずれその影響が出てくると言われてる。薬が効いている時と効いてない時の差が激しくなって、うつ状態になったり、自分の意志に関係なく手足がぐにゃぐにゃ動いたりする症状が出やすくなるらしい」

「そ、んな……」


薬を飲まなければ普通の生活が送れない。でも、飲み続けるとその代償を払うことになる。

なんて酷な病気だろう──。

難病という意味を、私は今しっかりと思い知った。


「律、まだ17歳なのに……」


就職も、結婚もこれからなのに。

長い人生の先が、すでに見えてしまっているなんて。

いつか必ず訪れる、寝たきりの生活や、苦しい副作用を恐れて生きていかなきゃいけないなんて……。

律の気持ちを考えると辛すぎて、じわりと涙が込み上げた。


「頭はしっかりしてるのに、思い通りにいかないことが増えていくのは、相当辛いし悔しいよな。一見普通に見えるから、こういう病気だって知らない人には理解が得られにくいし……」


そう言ったえっちゃんは、目線を上げて泣きそうな私を見つめる。


「律はそんな将来を考えて、君達から遠ざかっていたんだよ」

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