キミはまぼろしの婚約者
手紙はそこで途切れていた。
後半は、読み取るのもやっとなくらい、文字がすごく歪んでいる。
きっと、手の震えでここまでしか書けなかったんだろう。
最後の最後で書くのをやめ、ぐしゃぐしゃに丸めてしまい込んだ律の様子が手に取るようにわかって……
私は、またぼろぼろと涙をこぼしていた。
「っ……り、つ……」
“俺は、いつでもずっと、小夜のことを”
その後に続くはずだった言葉も、たやすく想像できる。
律は、本当に私を大切に思っていたからこそ、離れることを選んだんだ。
自分と関わらない方が、私が幸せだと思って……。
ぽつりぽつりと涙のシミができていく手紙を見ていた、その時。
「……それ、捨てたつもりだったのに……」
ベッドの方からそんな声がして、私はピクッと肩を上げて振り向いた。
いつの間にか目を開けていた律が、ふっと苦笑を浮かべる。
「入れっぱなしだったのか……。盗み見するなんて、小夜も悪いコになったな」
「ご、ごめん!!」
慌てて涙を拭って謝ると、律はクスクスと小さく笑った。