キミはまぼろしの婚約者

 * * *


『まずは彼の名前を知ることね。真木に調べてもらお』


ありさはその言葉通り、真木ちゃんに転校生くんの名前を調べてほしいと、さっそく頼んでくれた。

その二日後の朝、いつものように私とありさ、キョウの三人で登校すると、すでに教室にいた真木ちゃんが近付いてきて単刀直入に言う。


「わかりましたよ、彼の名前」

「仕事はやっ!」


ありさと一緒に私も目を丸くした。

昨日は入学式で、私達在校生は自宅学習という名の休みだったのに。

真木ちゃんの情報網に感心している間にも、彼女は眼鏡を押し上げてさっそく話し出す。


「名前は逢坂 律。12月25日生まれ、血液型はO型、好きな食べ物はから揚げだそうです」

「そこまで聞いてきたんだ……」

「私は名前しか聞いてません。彼の取り巻きの女子達が勝手に教えてきたんですよ」


へぇー、と微妙な顔で頷くありさ。

もう取り巻きの女子がいるって、初日からして大人気ってことだよね……すご。

ていうか、今の問題はそこじゃなくて。

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