キミはまぼろしの婚約者
「じゃあ、また」

「あ、うん!」


笑顔を残して颯爽と去っていく彼を、ちょっぴり胸をときめかせつつ見送ると。

呆然と見ていたありさ達が、興奮気味に次々と口を開く。


「え、え、今……“俺の部屋”って言ってたよね!?」

「しかもネックレス! それを外さなきゃいけないようなコトをしたってこと……!?」

「ハレンチですね」

「そんなんじゃなーい!!」


何で皆そんな考えになるの! たまたまチェーンが外れただけだってば!

それでも顔が熱くなってしまう私。

必死に弁解しようとすると、口元を片手で覆って俯いているキョウに気付く。


「小夜が……この幼児体型の小夜がついに……」

「あほ!!」


アンタまで変な想像するなー!

たしかに律の部屋にはお邪魔したけど、まだ、その……キスすらしてない清いお付き合いなんだから!


……まぁ、彼の唇が私に触れる瞬間は、何度も妄想しちゃっているけども。

そんな恥ずかしいことは胸に秘めておこう。


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