キミはまぼろしの婚約者
無邪気に笑ったありさは、美味しそうにクレープを食べ始めた。

私も種類の違うクレープを味わって、しばらくするとありさが神妙な顔をして言う。


「それにしても、まさか逢坂くんが難病患者だったとはねー……」


つい先日、ありさとキョウにも、律が病気のことを打ち明けていた。

ふたりとも驚きを隠せないみたいだったけど、もちろん受け入れてくれている。


「サニーサイド行った時に、意外と歩くのゆっくりだなぁとは思ったけど、それも病気のせいだったんだ」

「うん……言われてみれば、って感じだよね。普段は全然普通だし」


時々信じられなくなる。

こんなに元気なのに、いつか動けなくなる時が来るなんて。

でも、その時も私は彼に寄り添っていたいと思う。


「律は私達に迷惑かけたくなかったみたいだけど、私は逆にもっとそばにいたいって思うようになっちゃったよ」


……って、なんか恥ずかしいこと言ってるな私。

照れ隠しで、大口を開けてクレープを頬張ると、ありさがふふっと笑った。

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