キミはまぼろしの婚約者
「クリスマスが誕生日でO型……ぴったりだ」

「間違いなく律だな」


私の呟きでキョウも確信し、私達は一度目線を合わせた。

転校生はやっぱり律だった。

ずっと会いたかった、大好きな彼がすぐそこにいる。

そう思うと、いてもたってもいられない。今すぐ飛び付きたいくらい、想いが加速する。


「……授業始まるまで、まだあと10分あるぞ」


私の心の中を覗いたかのような、キョウの声が届いた。

彼を見上げると、声と同じく無愛想な顔をしているけど、“行ってこい”って背中を押してくれている気がする。

隣にいるありさも、にっこり笑って頷いた。

ふたりとも、私の律への想いを知っているから、気持ちを汲み取ってくれているんだ。

なんだかパワーをもらったように力が湧いてきた私は、ぐっと手を握って一歩足を引く。


「ちょっと行ってくる!」


くるりと身体の向きを変え、細かいことは考えずに走り出した。

ただ律に会いたい、その一心で。


「恭哉はほんとお人好しだねぇ」

「るせー」


後ろでそんな会話が交わされるのを耳に入れながら、私は教室を飛び出した。

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