キミはまぼろしの婚約者
姿が見えなくても、ふたりの和やかな雰囲気を感じる。

昔よりもっと絆が深まったようで、私も表情をほころばせていると。


「あ?」

「っっ!!」


突然、階段を下りてきたギャルソン姿のキョウが現れて、私は飛び跳ねそうなくらいびっくりした。

えっ、話終わってたの!? いつの間に!?


「なに、盗み聞き? 趣味悪いぞ」

「ちちち違います! 偶然たまたま今来たとこで……!」

「嘘ヘタすぎ」


あたふたする私を、呆れたように細めた目で見てくるキョウ。

後から下りてきた律も、私を見て目を丸くしている。

そりゃバレバレですよね……ごめん、ふたりとも……。


「つーか、お前にはそのカッコ、やっぱり似合わねぇな」


決まりが悪くなってふたりから目を逸らしていたものの、キョウがそんなことを言うから、ムッと睨む。


「関係ないし!」

「やっぱりコスプレつったらナースだろ」

「変態!」


またいつもの言い合いが始まってしまった、その時。


「こら、キョウ」


優しくたしなめる律の声が響いて、後ろから私の身体にふわりと腕が回される。


「俺の婚約者、あんまりイジメないでくれる?」

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