キミはまぼろしの婚約者
「俺、キョウと小夜にもう一度会わなかったら、絶対寂しい人生送ってたと思うんだ」


隣に座る律を見やると、彼も私を見て柔らかく微笑む。


「だから、ふたりにはすごく感謝してる。ありがとう」


そんなにたいしたことはしていないけど、律が前向きになってくれて本当によかった。

私も笑って、ふるふると首を横に振った。


「……キョウってさ、意外とすごく人の気持ちを理解してるよね」


とぼけているように見えて、実はちゃんと奥に隠れたものも見抜いているんだよなぁ。

そう思いながら言うと、律も頷く。


「あぁ。尊敬するし、嫉妬もするよ」

「嫉妬?」

「俺なんかより、キョウの方が小夜の気持ちをよくわかってるから」


目を伏せて少しだけ苦笑を漏らした彼は、再び私に向き直った。

まっすぐ見つめてくる瞳に、ドキリとする。


「俺もアイツに追いつきたいよ。離れてた分も、小夜のこともっとちゃんと見ていたい」

「律……」


ふいに、膝に乗せていた私の手にぬくもりが触れた。

骨ばった男のコの手にきゅっと握られて、また胸が高鳴り出す。

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