キミはまぼろしの婚約者

まぼろしの I love you



高校を卒業して、早くも5年が経った。

私は短大、律は専門学校に進んで、今はお互い社会人として毎日を精一杯生きている。

大人になって、スーツを着こなす律も当然カッコよくて、会社の女性社員に狙われやしないか、私は日々心配しているのだけど。


ケンカはめったにしない。

律が少し無理をして、それで私が怒っちゃうことはたまにあるものの、すぐに謝るから。


しかし、私の23回目の誕生日を数日後に控えた今日。

この日ばかりは、私と律はお互い固い表情で、あまり言葉も交わさずに隣り合って座っている。

ここは、私の家のリビング。

私達の前には、こちらも隣り合って私の両親が腰を下ろした。


「律くん、どうしたんだい? 改まって」


少し不思議そうにするお父さんだけど、彼が来た理由はきっと薄々気付いているだろう。

律はスーツを着ているし、私達は見るからに緊張しているし。


「今日は、お父さんお母さんに、大事なお話があって来ました」


普段“おじさんおばさん”と呼んでいる律が、こんな言い方をすれば、何の話かはもうわかるよね?

< 187 / 197 >

この作品をシェア

pagetop