キミはまぼろしの婚約者
熱く潤む瞳に、頭を下げる律の姿が映る。


「お願いします。俺達の結婚を、認めてもらえないでしょうか」


律の両親は、私のことを前から受け入れてくれて、結婚話にも前向きになってくれている。

あとは、私の両親が問題だ。


ふたりも、もちろん律の病気のことは知っている。

だからこそ、結婚を許してもらえるかわからない。

将来きっと大変な思いをするだろう人のもとへ、一人娘の私を嫁がせてくれるかどうか……。


「私からも、お願いします」


誠心誠意を込めて、私も頭を下げた。

お願い。律のお嫁さんにならせて──。


お父さんとお母さんは、神妙な顔で目を見合わせた。

そして、お父さんが律を見て口を開く。


「……律くんの病気は、遺伝する可能性があると言っていたよね?」


ドクン、と胸が波打つ。

そのことも、もちろん私達は懸念していた。


もし私達の間に子供ができたら、その子も律と同じ苦労をするかもしれない。

それは、家族になるには切り離せないものだし、この問題もあって結婚を反対されたという若年性パーキンソン病患者もいるからだ。

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