キミはまぼろしの婚約者
しっかりと耳を傾ける私達を交互に見て、お父さんはふわりと微笑む。


「だから、“病気でも、こんなに幸せなんだよ”って、胸を張って言える生き方をしなさい。
困った時の道しるべになるような……親になりなさい。ふたりで」


──その温かい言葉が胸に染みて、じわりと涙が滲んだ。

律も同じように、込み上げるものを堪えているように見える。

しっかりと頷いて、「はい」と力強く返事をした。


安堵したように笑うお母さんも一緒に、ふたりで私達に向かって頭を下げる。


「小夜を、よろしくお願いします」


胸がいっぱいになって、私は堪えきれずに涙をこぼした。


ありがとう、お父さんお母さん。

律の病気に偏見を持たないで、受け入れてくれて、

大好きな人のそばにいさせてくれて、ありがとう。

私達も、絶対に幸せな家庭を築いてみせるからね。


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