キミはまぼろしの婚約者
海で遊ぶ子供達の目も気にせず、私達はしっかりと抱きしめ合っていた。
降り注ぐ光も、穏やかな波の音も、私達を祝福してくれているみたい……
なんて、私幸せボケしてるのかも。
「今すぐキスしたいけど、ふたりきりになれるとこまで我慢するよ」
耳元で甘く囁かれて、照れ笑いを浮かべる私。
「ふふ、うん。あ、プレゼント本当にありがとう!」
少し身体を離すと、さっき渡された小さな紙袋を掲げてみせた。
律は毎年何かしら形に残るものをくれて、すごく嬉しい。
5年前にくれたプリザーブドフラワーも、今も色褪せることなく、私の部屋できらめいている。
「いいえ。見るのは家に帰ってからにしてね。なんか恥ずかしいから」
「えー何だろう?」
わくわくしながら言う私を、彼は微笑ましげに見つめて髪を撫でた。
……その日の夜、家に帰った私は。
左手の薬指にぴたりとはまった宝石に、涙をこぼしていた。
小さな箱の中に輝くそれと一緒に入れられていたのは、一枚の手紙。
そこに書かれていたのは、まさかのお別れの言葉と──
十年越しの、彼の想いだった。
降り注ぐ光も、穏やかな波の音も、私達を祝福してくれているみたい……
なんて、私幸せボケしてるのかも。
「今すぐキスしたいけど、ふたりきりになれるとこまで我慢するよ」
耳元で甘く囁かれて、照れ笑いを浮かべる私。
「ふふ、うん。あ、プレゼント本当にありがとう!」
少し身体を離すと、さっき渡された小さな紙袋を掲げてみせた。
律は毎年何かしら形に残るものをくれて、すごく嬉しい。
5年前にくれたプリザーブドフラワーも、今も色褪せることなく、私の部屋できらめいている。
「いいえ。見るのは家に帰ってからにしてね。なんか恥ずかしいから」
「えー何だろう?」
わくわくしながら言う私を、彼は微笑ましげに見つめて髪を撫でた。
……その日の夜、家に帰った私は。
左手の薬指にぴたりとはまった宝石に、涙をこぼしていた。
小さな箱の中に輝くそれと一緒に入れられていたのは、一枚の手紙。
そこに書かれていたのは、まさかのお別れの言葉と──
十年越しの、彼の想いだった。