キミはまぼろしの婚約者
律は優しいから、もしかしたら返事をくれるかもって、ちょっと期待してたところもあるんだけど。

でも、その期待もむなしく、いくら待っても彼から返事が来ることはなかった。

こういうことは有言実行してくれなくてもいいのに……なんて、勝手だけど少し思っちゃったよ。


初めて手紙を送ってから2ヶ月後の夏休み中、久々に律から電話が掛かってきた。

急にどうしたんだろう、とドキドキしながら出ると、第一声で聞こえてきたのはこんな言葉。


『誕生日おめでとう。……って言うためなら、電話したって怒られないだろうと思って』


そう、この日は私の13回目の誕生日。

それを覚えていて、電話まで掛けてきてくれたことが嬉しくて、これまでの寂しさが一気に埋められた気がした。

何度もお礼を言って、溜まっていた話題を時間が許す限り話そうとする私に、律は落ち着いた声でこう言った。


『手紙もありがとね。また送ってよ』


よかった、ちゃんと届いて読んでくれていたんだ。

ほっとしながら『うん!』と元気良く返事したものの、ちょっぴり口を尖らせて尋ねてみる。

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