キミはまぼろしの婚約者
いびつなトライアングル
私が律と衝撃の再会を果たした翌日のお昼休み、購買に群がる人の中でありさとパンを買おうと奮闘していた。
私が狙うのは、いつもすぐに売り切れてしまう、大人気のとろけるチーズ入りカレーパンだ。
今日こそは……!とケースの中を探していると、ひとつだけ発見。
よしっ!と内心ガッツポーズをして、手を伸ばしたその瞬間。
「あっ!?」
私が掴む寸前で、誰かがひょいっとカレーパンを取り上げてしまった。
唖然としながらばっと顔を上げると、そこにいたのは涼しげな顔をしたキョウ。
「ちょっと、それ私の!」
「パンは皆のものだろ」
袋の端を摘んで見せびらかすように掲げるこの男に、イラッとした私は頬を膨らませる。
「さっきから目でロックオンしてたんですけど」
「ちゃんと手にして、初めて自分のものだって言えるんだよ」
「何その小説みたいなセリフ!」
恒例の言い合いをしていると、こちらもパンの袋を手にしたありさが、笑いながら私達の間に入ってきた。
「仲良く半分こすればー?」
「「嫌だね」」
声を合わせて、ふんっとそっぽを向く私達に、ありさは「子供か!」とつっこんだ。