キミはまぼろしの婚約者
言われなくてもわかってる。痛いよ、すごく。

ずっと想い続けていたのは私だけで、惨めだし、自分でもバカだなって思う。

でも、私は本気だった。

今だって、どうにかして戻りたいって、性懲りもなく思ってるんだから……。


泣きそうな顔で再び俯く私の肩に、心配そうにするありさが優しく手を乗せた。


「小夜……あんなの気にすることないって。小夜が凹むのを見て楽しんでるだけなんだから」


私のために怒ってくれるありさをありがたく思って、「うん」と頷くものの、やっぱり笑顔はぎこちなくなる。

昨日、ふたりには律が私を覚えていなかったことを話したけど、気を遣わせないようになるべく明るくしていたいのに……。

すると、右隣から深いため息を吐くのが聞こえた。


「……見てらんねぇな」


ボソッと呟いたキョウを見上げた途端、彼は突然歩きだす。

私達の教室に向かうのかと思いきや、彼がずんずんと足を踏み入れていったのは、なんと隣の4組。


「キョウ!?」


えぇ、どうしたの!?

私もありさも目を丸くして、とりあえず戸口に駆け寄って4組の中を覗いた。

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