キミはまぼろしの婚約者
律に合わせなきゃってなんとなく思っていたけど、そんなことしなくていいじゃない。

あの頃の想いはまだ生き続けているんだから。私は私のままでいいんだ。

律のことを好きな、私のまま。

そう思ったらなんだか肩の力が抜けて、自然と動き出せるし、言葉も出てくる。


「……律は何してるの?」


湿布を探しながら、呼び方もあの頃のまま変えずに言うと、彼は特に気にした様子もなく笑みを向ける。


「ちょっと用事あって、来たついでにのんびりしてただけ。俺、保健委員なんだよね」

「そうなの!?」


委員会は強制とかいうわけじゃないし、まだ転入したばかりの律が入っているとは思わなかった。

しかも保健委員を選ぶなんて、なんか意外。

目を丸くする私に、彼は「真面目だろ」と言って口角を上げる。


「先生俺に甘いから、こうやって好きなだけ居させてくれるし、ベッドも使いたい放題」


そう言っておもむろに腰を上げた律は、なぜか私に近付いてくる。

ドキッとして硬直すると、彼はどこか色っぽい表情で、とんでもないことを囁いた。


「……一緒に寝てく?」

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