キミはまぼろしの婚約者
さっきの発言だけであれだけ動揺した私なのに、そんなグレードアップしたことを言われたら頭はパニックだ。

瞬間湯沸かし器みたいに、一気に沸点に達する私を見て、律はぶっと吹き出した。

そして、何やら棚の引き出しを漁ると、なんとか笑いを堪えながら、取り出したものをこっちに掲げてみせる。


「脱ぎなよ、靴下。俺が手当てしてあげるから」

「へ……?」


目をしばたたかせる私。

律が手に持っているのは、湿布と白いテーピングらしきもの。

も、もしかしなくても、私がはやとちりしただけ……?


「何考えたの、やらしーね」


意地悪っぽく右の口角を上げるチャラい王子様を前に、私は湯気が出るくらい顔を熱くしながら、「もぉ~~っ!!」と牛のごとく叫んだのだった。



捻挫の時は湿布を貼る、ということくらいの知識しかない私は、律に任せてみようと思い、言われるがままベッドに腰掛けた。

紺色のソックスを脱ぎ、湿布を袋から取り出す彼を眺める。

心底湧いた恥ずかしさはやっと落ち着いてきたけど、今度は緊張感が襲ってきてハンパじゃない。

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