キミはまぼろしの婚約者
苦笑する彼を見ながらへぇーと頷いていると、くるりと振り向いたキョウが、そばにあるアトラクションを指差す。


「情けねーな。あれくらい乗らないと」


皆で見上げた先にそびえるのは、ゴーゴーと音を立てるジェットコースター。

しかも、ほぼ90度に落ちたり、ぐるぐるに回転したり、ありえない曲がり方をしている。

そういえば、“ハリケーンの中を体感できる”とかいう新アトラクションができたって、ニュースでもやっていたっけ……。

私と律はぽかんと見上げ、絶叫系が好きなありさでさえ、口元を引きつらせている。


「……あれはあたしも無理」

「キョウ、ひとりで乗ってくれば?」


私が振ると、腕を組んだ彼は、涼しい顔でジェットコースターを眺めながら言う。


「俺ひとりだけ楽しむのは悪いだろ、遠慮するわ」

「いい性格してるね、君」


据わった目で見やる律。

結局自分も苦手なんじゃん!と散々つっこみながら、皆で笑い合った。


律とキョウはもう普通に話していて、こうして見ていると昔のままだ。

息もぴったりだし、私達のこと忘れてるなんて思えないくらい……。

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