キミはまぼろしの婚約者
「小夜、大丈夫!?」

「あ、うん、全然! 本当に話し掛けられただけ。ありがと」


心配そうに私の肩に触れるありさに笑い返した。まぁ、びっくりしたけどね。

よかった~と安堵の笑みを浮かべるありさの横で、キョウは辺りを見回して言う。


「律はどこ行ってんの?」

「トイレ。もう戻ってくると思うんだけど……」

「タイミング悪いな」


そうだね……律がいれば絶対平気だったのに。

なんて、どうしようもないことを思って苦笑を漏らした。


「それより、お化け屋敷はどうだった?」


気分を変えて話を振ると、ありさは目を開いて話し出す。


「結構怖かったよ! この人、平気な顔してめっちゃ手汗かいてんの」

「お前は驚きすぎてオバケ殴ってたよな」


相変わらずおかしなふたりに笑いながら、律が戻ってくるのを待った。



──しかし。

それから5分ほど待っても彼は来ない。

さらに5分が経ってしまい、さすがに心配になってきた。

< 80 / 197 >

この作品をシェア

pagetop