キミはまぼろしの婚約者
約束の優先順位
月曜日、ありさと一緒に登校すると、早々と朝練を終わりにしたらしいキョウが4組の前にいた。
彼が呼び出しているのは、やっぱり律だ。
ありさと目配せして、私達も彼らのもとに駆け寄る。
「何でこの間急に帰ったわけ? ちゃんとした理由があるなら言えよ」
怒っているというより、心配しているような口調でたずねるキョウ。
律は私達と視線を合わそうとしないまま、覇気のない笑みを見せる。
「ただの気まぐれだよ」
「お前、そんなことする奴じゃなかっただろが」
いぶかしげに眉をひそめるキョウも、やっぱり私と同じことを思っているんだ。
律があんなことをしたのには、きっとちゃんとした理由があるって。
だから今、こうして聞いているんだよね。
本当のことを教えてほしい。
そう強く思いながら律を見つめると、彼は目を伏せて力無く呟く。
「……よくわかったんだよ。やっぱり俺は、君らとは一緒にいられないって」
ドクン、と重い音が身体の奥で響いた。
“一緒にいられない”って、どういうこと?
やっぱり律は、何か大きな問題を抱えているんじゃ……?