キミはまぼろしの婚約者
「いきなりどうした」

「本気で告白するの!?」

「もちろん」


戸惑うふたりだけど、私はまっすぐ前を見て頷いた。


「今のままじゃ、何も変わらないもん。たぶんダメだろうけど……最後の望みに懸けてみようと思って」

「最後の望み?」


一瞬眉根を寄せたキョウに、笑みを向けて答える。


「思い出の場所に律を連れていって、今までの想いも全部伝える」


思い出の場所は、律が夢のようなプロポーズをしてくれた、あの海だ。

あの約束も、私達の思い出もまぼろしになりつつあるけど、もう一度ふたりであの場所に立ったら、奇跡が起こるかもしれないから。


「もし律が昔のことを覚えていたら、何か反応を見せてくれるかもしれない。それでもきっぱり断られたら、そこで終わりにするよ」


人生最初で最大の失恋だから、時間はかかるだろうけどね。

私の決心を聞いたありさ達は、励ますように笑みを向けてくれる。


「……そっか。頑張りなよ!」

「もしダメだったらカレーパンおごってやるわ」

「今の言葉、絶対だからね」


笑い合って、少し気分が上昇してきた私のスケッチブックには、授業が終わる頃にはしっかりとマリーゴールドが咲いていた。


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