キミはまぼろしの婚約者
* * *
7月に入り、期末試験をなんとかこなした後、私はすぐに4組に向かった。
ドアから中を覗こうとすると、ちょうど廊下に出ようとしていた女子ふたりと鉢合わせしてしまい、お互いに息を呑む。
このふたり……前、私の悪口を言っていた子達だ。
「……何か用?」
怪訝な顔で聞いてくる、メイクの濃い女子に一瞬ひるむ。
でも、逃げないでちゃんと用件を伝えないと!
息を吸い込み、彼女をまっすぐ見据えて口を開く。
「律を呼んでほしいんですけど」
それを聞いた彼女達は、半ば予想していたように驚きもせず、呆れた笑いをこぼした。
「こりないねぇ」
「相手にされてないっていうのに、まだめげないんだ。メンタル強すぎ」
バカにしたような言い方も笑いも、むくむくと怒りが湧いてくるけど、ぐっと堪える。
「逢坂くんはあなたのこと興味ないでしょ。帰った方がいいんじゃない?」
むっかつくーー。私はあなた達と話しに来たわけじゃないんだけど!
「いいから、律を──!」
「呼んだ? 小夜ちゃん」