キミはまぼろしの婚約者
神様、願いを叶えて
七月七日──七夕の今日、律とふたりで会う。
約束の時間は午後なのに、朝起きた瞬間から緊張しちゃって、ご飯もあまり喉を通らない。
ダイニングテーブルの上の、私のお皿に残った料理を、お母さんが珍しげに見る。
「どうしたの? 珍しく少食じゃない」
「たまには食欲ない時だってあるよ。ごちそうさま」
残しちゃって申し訳ないけどね。
腰を上げようとすると、お母さんが何かを思い付いたように、「あ」と声を発する。
「わーかった。デートなんでしょ!?」
「ぶほっ!」
デートという単語に反応したらしく、私の向かい側でお茶をすすっていたお父さんが咳き込んだ。
お母さん、余計なこと言わないでよ!
「デデデデート!? そんな相手がいたのか、小夜!?」
「ち、違うよ!!」
「隠さなくてもいいのに」
「本当にそんなんじゃないから!」
思いっきり動揺するお父さんと、ニヤニヤするお母さんに、私は顔を熱くしながら否定する。
一応ふたりで出掛けるけど、付き合ってるわけじゃないからなぁ……。
ラブラブなデートだったらどんなにいいか。