早朝のシンデレラ
初めての世界
「シンデレラは、王子様と恋に落ちるのです…………」

私、未来山愛美。

暗い暗い塔の中で、幼い頃読んでもらった、私が大好きなお話『シンデレラ』の中でも特に好きな場面を口に出した。

私以外に誰も居ない塔。

やはり、その1文は山びこのように響く。

シンデレラは、灰かぶりという意味。

見た目は汚く、灰をかぶっていても、心は透き通った水のように綺麗で純粋。雑じり気がない。

そんなシンデレラは、私の憧れの人。

憧れというより、私のなりたい人。

私もシンデレラのような恋をしてみたい。

1度だけでいいから塔の外に出てみたい。

そして…

1度だけでいいから、両親に愛されたい。

そんな願いを、私は口にもせず、ところどころに穴が空いているベッドに身を投げ、夢の世界へと入っていったのでした…

< 1 / 7 >

この作品をシェア

pagetop