神に禁じられた恋
二人は駆け出した。





白い月光の下、夜露に煌めく薔薇の樹々の間を。




庭園を取り囲む針葉樹の林の中を。





裸足のまま走るエレティナの足がしとどに濡れているのに気がついたレイモンドは、エレティナを抱いて駆け出した。





二人が逃げ込んだのは、王宮の片隅にある、遥か昔に忘れ去られた東屋(あずまや)。





今は誰ひとり訪れることもないが、エレティナとレイモンドは幼い頃よく隠れ遊びの場所として使っていた。






「………懐かしい」





「あぁ。ここでよく、二人で昼寝をしていたな」





「天井板の隙間から陽射しが射し込んで、小さな埃がきらきら光りながら舞い踊って、とってもきれいだった」





「俺はいつもエレティナに見惚れていたから、知らなかった」





< 33 / 45 >

この作品をシェア

pagetop