社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「そろそろ始まりましたよね? コーヒー運びますね」
いつものタイミングより少し早い。けれどその場にいたくなかった私はさっさとコーヒーを運ぶことにした。
小さくノックをして会議室に入ると、営業統括部長の深沢さんがプロジェクターを使って先月の実績の説明をしているところだった。
邪魔にならないように、順番にコーヒーをおいて行く。衣川課長のところにミルクと砂糖も置いた。
いつも飲んでいる缶コーヒーはブラックじゃなかった。
だたそれだけの理由だった。別に使わければ使わないで片付けすればいいだけの話だ。
他の社員のコーヒーを配り終え、トレイを片付けてデスクに戻ろうと給湯室に向かうと中から声が聞こえてきた。
合田さん、まだここにいたんだ。
誰か他の社員も一緒にいるみたいだ。
「あーあ。早くいい男捕まえて仕事なんて辞めちゃいたい。っていうかさぁ……河原さんってさぁ、営業とかに媚び売って“私頑張ってます!”って感じがウザいよね」
自分の名前が出て足を止める。
「あーたしかに。自分はあなた達と違う! みたいな?」
「そうそう。あんなに頑張っちゃってさ。そんなことしたって大して給与が上がるわけでもないし。所詮は一般
職なのに、なに勘違いしているんだろうね。あはは」
「でも真紀子もひどいよね。散々あの子に仕事押し付けてるくせに」
ケラケラと笑う声が聞こえて私は唇を噛んだ。
「賢いって言ってよ。使えるものはなんでも使うのよ、私は。せいぜい役に立ってもらうわ」
「悪い女! あははは」
高笑いが聞こえて、いたたまれなくなった私は、トレイは後で返すことにして踵を返してデスクに戻った。
彼女たちがなにを人生の目標に置いても自由だ。それが結婚であっても私はかまわないと思う。けれど、私のやっている仕事や目標をバカにするのは間違ってる。
誰にも認められなくても、私は任された仕事は一生懸命したい。それが自分のためだから。