社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「河原、会議終わったから会議室の片付け頼む」

なんとなく傷ついたまま仕事をしていると、衣川課長が会議から戻ってきた。

「わかりました。行ってきます」

参加していたほかの社員も戻ってきているのでそろそろだとは思っていた。さっと手元の仕事を片付けて立ちあがる。

「あ、それと、コーヒー美味かった」

「あ、え……?」

私の反応など気にする様子もなく、そのまま自分の席に戻り会議中にたまっている伝言メモを見て、すでに電話をかけ始めていた。

感謝された。さっきあんな風に影で言われて誰にも認められなくても……なんて思っていたけど、身近にこうやって小さな仕事でも見てくれている人もいるんだ。

あ……それに美味かったってことは、コーヒーを飲んだってこと?

合田さんの話では今まで一度も飲んだことがないって言ってたのに。

会議室に足を踏み入れると、真っ先に衣川課長が座っていた場所へと向かう。

「本当に飲んだんだ……からっぽだ」

それに一緒に添えておいた、スティックシュガー二本とミルクが両方ともなくなっている。もしかして今までコーヒーに手を付けなかったのって、ブラックだと飲めなかったからなの?

ひとつの結論にたどりついて、おかしくなって笑ってしまう。普段あんなにクールな課長が実は甘党だったなんて意外な発見だ。
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