社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「成瀬ー! それもう立派なセクハラだかんね! 朔ちゃん、総務のセクハラ委員会に訴えていいよ」
ちょうどフロアにいた、汐里さんが腕を組んで成瀬さんを睨んだ。
「セクハラって言いすぎだろ。お前が誰にも誘われないからって、そんなに怒るなよ」
「はぁ? あんたが知らないだけで、私だってちゃんと誘われますー!」
「誰にだよ? 言ってみろよ」
「なんで——」
「あの、お疲れ様です」
言い争うふたりに声をかける。気が済むまで続くのがいつものことだから、先に帰ることにした。
「お疲れ様」
「お疲れ! また明日な」
同時に言われて笑いそうになった。やっぱりこのふたりは気があうのだ。
まだ言い争っているふたりを残してロッカーへと向かおうとして足を止めた。給湯室の布巾を洗濯して屋上に干していたのを思い出した。
うっかり忘れて帰るところだった……。思い出してよかった。
くるっと方向を変えて、エレベーターに乗り込む。屋上のフロアから階段を登り扉を開けた。
夕暮れに染まるなか人影を見つける。