社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
第二章
第二章
「では、成瀬の契約を祝してカンパーイ!」
仕事が終わった午後七時。会社近くの居酒屋では深沢部長の乾杯の音頭が響いていた。
先月始め成瀬さんが取った契約は今季で今のところ一番の大型契約だったことからそのお祝いと、一課と二課の親睦を兼ねた飲み会が開かれていた。
私もグラスに注がれたビールで乾杯をし、少しだけ口をつけた。あまりお酒に強くないと自覚があるぶん、飲み過ぎないように気をつけなければ。下っ端の私が、空いたグラスを下げて、新しい注文を聞いて店員さんに伝える。
もちろん今回も幹事さんがいるのだが、人数が多くなると行き渡らないことも多いので気がつく範囲で動くようにしていた。
「こちら、飲み物たりてますか?」
深沢部長や、衣川課長、それに二課の少しでっぷりとお腹が出た佐山課長が集まるとこで、声をかけた。
「あぁ、大丈夫だ。ありがとう河原。あ、この間教えてくれた店よかったよ」
深沢部長が思い出したように話し始めた。
そういえば、先日声をかけられて有名ショコラティエがいる店を教えたんだった。
「奥様、喜んでいただけたでしょうか?」
「あぁ。奥さん怒らせたときには甘いものに限るな。おかげで夫婦の危機は無事回避だ」
「お役にたてて、なによりです」
本当に深沢部長は衣川課長とは正反対だ。
部下との垣根がないといえば少し語弊があるかもしれないけれど、積極的に自分から話しかけていって、距離を縮める。