社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
本来もっている性質も関係あるとは思うけれど、部下との関わりかたが全く違う。
どちらも私にとっては良い上司にかわりはないのだけれど。
部長に挨拶を終えて、テーブルの上のグラスを片付ける。
「もうそれくらいでいいだろう。飲み物も食べ物も行き渡った。それより河原はさっきからなにも食べてないだろう。ちゃんと食べなさい」
グラスを持つ手が衣川課長にやんわりと止められた。
「はい。では……向こうで食べてきます」
こんな場所でも部下のことはしっかり見てるんだな。
私は自分の席に戻ると、目の前の料理に手をつけた。
「朔ちゃん、おつかれ様〜」
少しほろ酔い加減の汐里さんが、隣に座った。
「ビール飲めないでしょ? なにか他のもの頼む?」
「あ、今、烏龍茶をお願いしてるので大丈夫です」
「だったらいいや。しかし成瀬すごいね。なんか同期として落ち込んじゃうな」
汐里の視線をたどれば、深沢部長の横でビール瓶を持ちお酌をしている成瀬さんの姿があった。
「ずっと粘り強く提案を続けていたところですからね」
チャラチャラしているように見られがちの成瀬さんだけど、実際の仕事ぶりは堅実だった。人懐っこい笑顔と、細やかな提案でお客様の信頼も厚い。
「汐里さんだって、頑張ってるじゃないですか。それに金額だけが全てじゃないっていつも言ってる汐里さんが私は好きです」
「朔ちゃんっ! 本当にいい子」
「わっ……」