社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
ギュッと汐里さんのふくよかな胸に顔が押し付けられた。
この感触……羨ましい。
「おい、なに女二人で抱き合ってるんだよ! それよりもこの俺様を敬え、崇(あが)め奉(たてまつ)れ!」
そんなふたりに成瀬さんが声をかけてきた。
「どうして私が、あんたなんか……」
「ん? 今日の飲み会の趣旨ってなんだったっけ? あれ……たしか俺の契約の——」
「わ、わかったわよ。おめでとう」
汐里さんは唇を尖らせながらも、お祝いの言葉を口にした。
「あん? 聞こえないなぁ〜かっこいい成瀬様、おめでとうございます。だろ?」
「はぁ? 馬鹿なのアンタ。カッコいい成瀬なんてこの世に存在しないし」
「お前、視力大丈夫なのか?」
いつものやり取りが始まったと、周りは笑いながら見ている。だけど、さっきの弱気な発言をしていた汐里さんの様子を知っている私は、間に入った。
「あの私、今日の主役にお酌もしてませんでした。すみません! 注がせていただきます」
ビール瓶を持つと、新しいグラスを成瀬さんに渡した。
「悪いね〜」
「気が利かなくてすみません」
トクトクと音をたててビールをグラスに注ぐ。するとその瓶を、成瀬さんが持った。
「河原さんもどうぞ」
どうしよう。ビール得意じゃないんだけど。でも今日は成瀬さんのせっかくのお祝いだし。
「いただきます」
グラスを差し出すと、並々とビールが注がれた。
うっ……多い。