社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「乾杯」
そう言われて一気に煽る。ちびちびいくと苦いのでさっさと飲み干してしまおう。
「ちょっと、朔ちゃん大丈夫?」
隣で汐里さんが心配そうに小声で聞いてくる。
「大丈夫です」
本当はもう限界だけど。
それを見ていた他の社員が話に割って入る。
「河原さんってお酒飲めないんだと思ってた」
「今まで隠してたの?」
「いえ、決してそういうわけじゃ……」
「ほら、せっかくだからもっと飲もう」
ビール瓶を差し出されて、空のグラスを持つ手をどうしようか迷う。
やっぱり飲めません! なんて言えない。
思い切って差し出したグラスを、横から来た手が奪う。
「もう、やめておけ」
「き、衣川課長……!」
たしなめるような口調だったけれど、眉間に皺を寄せた姿を見て、それまで私にお酒をすすめていた人がさっといなくなる。
「あ、あの……ありがとうございます」
「成瀬、そんなに酒が飲みたいなら俺がつきあってやるから来い」
「い、いや……あの、俺はそんなつもりじゃ」
首根っこ掴まれた成瀬さんが、ズルズルと衣川課長に引きずれて行く。結局成瀬さんは深沢部長と、衣川課長、そして佐山課長の第一営業部のトップスリーとお酒を飲むことになったみたいだ。
「あーあ。ちょっと可哀想。だって部長と、衣川課長はまだしも……佐山課長って酔っ払うとすぐ説教臭くなるし、絡んでくるよね」
隣の汐里さんの言うとおりで、すでに成瀬さんは佐山課長の横で正座で話を聞いている。