社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
とりあえず汐里さんにメールで、二次会不参加と伝えてなんとかトイレから出た。
そんなに飲んだつもりなかったのにな……。トイレにこもっている間に会社のみんなはすでに移動してしまったみたいだ。
腕時計を確認するとバスの最終に間に合いそうだ。足元はまだおぼつかなかったけれど、少し復活した私は、お店の人に「ごちそうさまでした」と声をかけて?—トイレ占領してごめんなさい——と心の中で謝った。
「遅い——大丈夫なのか?」
「ひぃっ」
いきなり声をかけられて、体がビクッとなる。
声のした方をみると、そこには衣川課長が立っていた。
「ど、どうしたんですか? 二次会は……」
「いかない。それよりも、お前の方が心配だ」
そんな……ここでずっと待っていてくれたってことだよね。
気持ちも悪いのも忘れて、胸がキュッと音をたてて喜ぶ。待たせておいて喜ぶなんて不謹慎だと思うが、嬉しいのだから仕方がない。
「ありがとうございます。さっきよりは気分がよくなりました。……と言ってやっぱり酔っているのには変わりないんですけどね」
「無理をして酒を飲むからだ。行くぞ」
「行くぞってどこへ?」
「タクシー拾うぞ」