社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
私が、追いついた時には衣川課長が父にバスルームに押し込まれているところで、私は一足先にリビングに向かった母に呼ばれた。
「朔乃〜! 課長さんにこれ持って行って」
「え、あ、うん」
慌ててリビングに向かうと、押し入れの中から新しいタオルを取り出しているところだった。
「これこれ、いただきものの今治タオルが役に立ったわ」
嬉しそうにふかふかのタオルを広げてニコッと笑うと、父のだろうか未使用のグレーのスウェットと一緒に差し出された。
普段はダラダラとテレビばかり見てるのに、今日は見違えるようにキビキビ動く母に驚いてしまう。
「母さん、タオルはまだか?」
父もリビングに戻ってきた。
「ほら、ぼーっとしてないで早く持って行きなさい。タオルがないと課長さん困っちゃうでしょう」
「うん」
確かに母の言うとおりだ。私は受け取ったタオルと着替えを持ってバスルームへ向かう。
——コンコンッ
「失礼します、着替えを——、き、きゃーー!」
扉を開けた瞬間、思わず悲鳴をあげてしまう。だって、そこには上半身裸の衣川課長が立っていたからだ。
慌てて後ろをむいて、その引き締まった体が視界に入らないようにする。いや、引き締まったって認識している
時点で十分観察してしまっていた。